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Neighbors Interview FOOD&COMPANY ファウンダー/共同代表 谷田部摩耶さん

学芸大学駅から商店街を抜けた先、賑やかさが少しずつ落ち着いていく住宅街の一角にFOOD&COMPANYは店を構えています。みずみずしい生鮮が並ぶ明るく清潔感溢れる店内には、近隣住民の方がふらりと立ち寄り顔馴染みの店舗スタッフにおすすめを聞く様子など、その土地に根づいた穏やかな空気がながれています。2014年に創業し、現在5店舗を展開するFOOD&COMPANY。ファウンダーであり、共同代表としてバイヤーを務める谷田部さんに、その選び方や届け方の背景にある哲学、そしてNeighbors Food Marketへの想いをお伺いしました。

「漠然とした違和感」から始まった、小売という選択

谷田部さんは、共同創業者の白冰(ばい・びん)さんと2人でFOOD&COMPANYを立ち上げました。きっかけは、それぞれが前職の中で感じたバランスを崩した資本主義への、言葉にしづらい違和感だったといいます。

谷田部:拝金主義に偏った社会のあり方に疑問を感じ、日常の消費行動の中から生活者とともに問いを立て新たな選択肢を模索する場所をビジネスとして表現したいと思ったんです。食の持つ力や可能性に魅力を感じて、生活者に一番近い頻度高くタッチポイントを持てる小売という業態に興味を持ったというのが原点です。
扱う食材を考えていく中で、自然と上がってきたものが「オーガニック」でした。しかし、それは当時の日本のマーケットで一般的に語られる文脈とは、少し違う意味を持っていたといいます。

谷田部:自分たちが共感共鳴し、シンプルに「いいな」と思うものを集めていった結果、自ずとオーガニックの基準を持っているものが多かった、という結果論なんです。認証がどうとか、農法がどうとかが入り口だったわけではなくて、私たちの興味の根底にあったのはプロダクトの背景にある価値観や方向性でした。一般的な大量生産型の食材を否定する意図はないし多忙なライフスタイルのなかでは私たち自身もすごく恩恵をうけていて助けてもらっている。けれどこれからの食産業や社会の未来を考えた時に、これ以上の利便性や経済合理性の追求が必要だとは感じなくて。そこを追求するとバランスが崩れると思うんですよね。

私たちの心身のバランスや環境負荷の高まりなど、失っていくものが多くあるのではないのかなと思ったんです。資本主義が生み出す経済活動の矛盾をゼロにすることはできないけれど、自然環境を含めた関わるステックホルダーの多くがお互いに気持ちよく付き合える関係性を模索する中で、現状のお取引先との出会いが生まれていきました。

開業から13年、ゆるやかに変化した考え

谷田部:開業直後は、社会背景的にも、農薬/化学肥料や添加物がもたらす健康被害を避けたいという理由からオーガニック食品を選択する方も多かった気がしますそこから数年たって、コロナ渦になりお客様が家の中で食事の重要性を意識するようになり、自然と自分の健康を食から整えていこうと考える方々が増えてきました。私たちとしてもシンプルに美味しい、そしてそれを作る人や、流通させる人にもポジティブな影響をもたらす食材を未来をつくる前向きな選択肢の一つとして増やしていきたいとおもっています。

そのためにも、生産者と生活者はもちろんその間をつなぐ私たちのような小売や流通の担い手たちが長期的に無理なく継続していける選択肢であることを運営の大事な基準にしています。それが結果的に生産現場における適正量の農薬/科学肥料あmたは添加物の使用につながるケースもあると考えています。それらの使用を一緒くたに悪としたり、使わないことを正義として極論な二項対立にするのではなく、なんのためにそれを使うまたは使わない選択をとっているのか。その背景になある意図を理解する姿勢を私たちは大事にしています。

お店としてのスタンスのわかりやすさはお客様とのコミュニケーションの上で大事な要素の一つではありますが、何かを二項対立的に表現してしまうとわかりやすくはなるものの本質的な論点が抜けてしまうという危機感がありました。

自分達もいち消費者として食材を購入する時には用途によって柔軟に使い分けをしています。お店としての多少のわかりにくさはあったとしても、お客様との対話を通して、「そういう背景でこういうものを選んでお店に置いているのね」と知っていただけるように、ゆっくりでもたしかな信頼関係を育んでいきたいと思っています。

小売として食の多様なステイクホルダーと関わる中で谷田部さん自身の考えも自然と変化してきたようですが、きっかけはあったのでしょうか。
谷田部:これまでも私自身がインタビューで『ジャンクフードも食べたりしますか?』と聞かれることが多くて。実際はファストフードやインスタント食品、一般的なスナック菓子なども普通に食べますよ、と答えると驚かれるんですね。それってつまり、こういうものを売っている=それ以外を良しと思わない人たち、とも捉えられているということだと気がついたんです。それはお客様にもそう捉えられている可能性があって、それは危ないなと思いました。

谷田部さん自身が生産者との対話が増える中で、農法や製法の違う生産者の間に分断が生まれている現実も目にしてきました。 

谷田部:どちらも社会にとって必要で、状況や必要に応じてそれぞれの良さを融合させたり使い分けたりしながら、未来には何が必要かの視点で柔軟に進化していけたらいいはずなのにもったいない分断が起きてしまっている。小売店として分かりやすさを追求してきたつもりが、もしかすると自分たち自身がその二項対立を生み出す存在になっていたのかもしれない。そう気づいたとき、それは意図していたことではないと感じました。

老舗地方スーパーで見た光景が教えてくれた、バランスの大切さ

考え方が変わる転機になったのは、ある老舗スーパーで見た光景でした。
谷田部:開業前に、地方の老舗スーパーを訪れたとき、自然栽培のお野菜の隣に、コーラやカップラーメンが並んでいました。最初は『お客様はお店をどう使うんだろう、矛盾してないかな』と思いました。でも、そちらのスーパーは地元で何十年も愛されているお店で、日々の買い物に使う生活者の視点で見れば、それはむしろ健全でありがたいことだと、今振り返ると思えるんです。時間や心に余裕があるときは、多少高くても自然環境への負荷の少ないもの、サステナビリティーへの貢献が高い食材を選びます。でも、財布や時間の事情で便利なものに助けられることも当然あります。その両方を同じ場所で買えることに意味があるんですよね。安定した生産や供給、毎日使い続けられる価格帯であることも大事なサステナブルの要素と考え、FOOD&COMPANYでも一部、添加物や農薬などを使った食材も取り扱っています。
と谷田部さん。こういった考えの変化のなかで品質の安定性を保つために必要となる添加物も、使用の背景や状況によっては許容するようになったと話してくださいました。

私たちの役割は、ジャッジではなく「きっかけ」

FOOD&COMAPANYが大切にしているのは、何が良い・悪いと決めることではなく、選択のための情報を届けることだといいます。

谷田部:私たちはあくまでも、きっかけや入り口を提供する存在であることに重きを置いています。たとえば果樹の生産者さんが、育成期間中の天候悪化の影響で普段は使わない農薬を使ったケースがあったとき、だからと言って仕入れを止めるということは私たちはしません。それを理由とともにポップで伝えて、買うか買わないかはお客様に決めていただく。説明をしたうえで賛同いただける方に届けばありがたいし、生産者だけに経済的な負担がいくことのないように私たちも柔軟に必要な対応を判断していく、という感覚なんです。

その根っこにあるのは、小さいお店の規模だからこそできるユニークさやお客様とのコミュニケーション。「やさしい経済を通してリラックスした社会へ」という、FOOD&COMPANYの一貫した想いがありました。

数より、深さを。10店舗程度の規模を目指す理由

谷田部:FOOD&COMPANYは現在5店舗を展開していて今後も店舗を増やしたいと考えていますが、それは規模の追求が目的ではありません。店舗ではスポットだけのような単発の取り組みはせず、少量であっても継続的なお取引の関係性を大事にしているので、棚はいつも埋まっているんです。だから、せっかく良い生産者との出会いがあっても、リアルな店舗では物理的な制約があるため、新たな表現の場所が必要ということになります。店舗を増やすことは、サステナブルフードの間口をひろげ、「やさしい経済」の循環を加速させることに直結しているんです。

生産者の想いのこもった商品を、一人でも多くのお客様に届けたいというシンプルで谷田部さんらしい回答でした。

Neighborsに期待することは、バイヤー同士、生産者同士の学び合い

最後に、Neighbors Food Marketへの期待を伺いました。
谷田部:バイヤーって、基本的に自社の立場や視点からの偏った発言になってしまうことが多いものです。それはそれぞれの置かれている社会的ポジションの違いから仕方のないこともありますが、商談の場での一部のバイヤーのひと声に右往左往してしまう生産者さんも多い。横の繋がりを持てる場があれば、生産者さんもより広い視野で判断できるようになると思うんです。

データドリブンになりすぎることへの警鐘も鳴らします。

谷田部:スモールビジネスの強さは、データドリブンからはあまり出てこない気がしていて。自分たちが何を表現したいのか、軸がはっきりしていないと、情報に振り回されてしまう。だからこそ、それぞれの強みやの個性を大事にしながら、お互いにあなたの価値はここだよねと見つけ出し合える生産者同士やバイヤー、Neighborsに関わる人が共に前向きに成長していくための仲間の場になったら嬉しいですね。

過剰に均一化された価値観ではなく、それぞれの個性や偏りも愛せる場所であってほしいと、谷田部さんは微笑みます。Neighbors Food Marketはバイヤー、生産者の横のつながりをつくり学び合いの輪を広げていく、ひいては消費者にその想いを届けるプラットフォームになっていきたいと考えています。


FOOD&COMPANY 学芸大学店

〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-14-15
3-14-15 Takaban, Meguro-ku, Tokyo 152-0004

OPEN 10:00-20:00 無休(年末年始を除く)

TEL/FAX 03-6303-4216 / 03-6303-4219

SNS @foodandcompany_grocery (Instagram)
@FOODandCOMPANY (Facebook)

Text/Photo Naomi Yamashita (Neighbors Food Market)

Neighbors Interview FOOD&COMPANY ファウンダー/共同代表 谷田部摩耶さん