
Neighbors Interview ビオセボン・ジャポン 株式会社/ 商品本部 輸入・物流部 輸入品マネージャー 向井昭登さん
フランスの朝市のような店内の賑わいと色鮮やかな生鮮食品、そして確かなオーガニックの品質基準。どちらも大切にしながらオーガニックスーパーとして日本の暮らしに寄り添ってきたビオセボン。輸入食品のバイヤーとして日々商品の仕入れに向き合う向井さんに、これまでのキャリアや、オーガニックという市場が抱える本質的な課題、そしてサプライヤーとの新しい挑戦についてお話を伺いました。
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フランスでの留学経験、そして物流から始まった輸入食品キャリアのスタート
向井さんのキャリアは、高校・大学時代にそれぞれ1年ずつ過ごしたフランス留学から始まります。
向井:就職活動の時に、ものづくりと学生時代に学んだフランス語を軸にしたキャリアを目指し、九州の物流会社で約2年間倉庫業務を経験後、カルフールの輸入商品を取り扱う会社へ転職しました。これが輸入食品キャリアの出発点でした。
その後、イオンの「トップバリュ」で国内外の商品開発を担当の後、ドイツ発の会員制卸売「メトロキャッシュ&キャリー」の日本法人へ移り、2年間PB・輸入商品のマネージャーを経験。再びイオンに戻り、調味料やトマト缶、パスタなど常温加工食品の輸入やディスカウントストアの新規事業立ち上げに携わり、販促や数字管理、店舗づくり、ロゴデザインまで、小売の現場を丸ごと経験しました。本当にいろんな経験をさせてもらった中で、今の場所までようやく来たなという気持ちがあります。そうして2022年秋、出向という形でビオセボンに加わりました。


「オーガニックだから買う」から「美味しいから買ったら、オーガニックだった」へ
「実はビオセボンに来る前は、オーガニックにそこまで興味があったわけではなかったんです」と正直に語る向井さん。しかし3年半、生産者や店頭のお客様と向き合う中で、認識は大きく変わっていきました。
向井:今までのオーガニック商品は、値段と美味しさが二の次になって、認証をつけることが目的化してしまっていた面があります。味がイマイチでも健康に良さそうだからというイメージや、それを払拭しようと加工しないで自然であることのよさや熱を入れないことで栄養素を守っているなどと伝え方のアプローチも色々と試してはていますが伝わり方はどうしても限定的。やっぱり、美味しい商品でみんなが手に取りたい商品ということが大切で、買っているものがたまたまオーガニックだったという世界観を作らないと、市場は広がらないと思っています。
そして向井さんの安心安全なだけでなく美味しいから選ばれるオーガニック食品への挑戦は、カテゴリも広がっています。
向井:この2年ほど特に力を入れているのが、お菓子のカテゴリー。オーガニックのお菓子はいままでなんとなく、「自然な味、やさしい味」と評価されるものが多かったと思うのですが、オーガニックが好きな人だって、ジャンキーなものも好きなはず。もちろんオーガニックなのですがいろんなフレーバーのポテトチップス、楽しさとオーガニックとが両立する商品を増やしていきたいと思い、スペインから輸入しています。

一方で、価格については構造的な課題も指摘します。
向井:作る側がオーガニックに付加価値をつけて高く売ろうとすると、結局売れずに悪循環になってしまう。けれど生産ラインの洗浄などオーガニック製品はどうしても製造コストがかかるのが事実ですし、その理解がお客様に広がれば、自然と適正な価格としての理解が進んでいくはずなんです。
円安という逆風のなかで、ファンをどう広げていくか
この3年半で、ユーロは120円台から180円台へ。「生産者の値上げも重なって、体感としては当時の2.5倍近くコストが上がっている実感があります」とおっしゃる向井さん。それでも直接お客様に商品の背景を伝えられた時には、値段を見ずに選んでくれるファンが着実に育っているといいます。店頭のイベントで商品を試食していただきながらお話ししたご婦人には「いつも楽しそうにして(お店に立って)いらっしゃるわね」といっていただいたり、その場にいた他のお客様ともその後もお店で顔を合わせるようになったりと、何度もお店に通ってくださるお客様とのエピソードも印象的でした。
向井:一方で、輸入商品は店頭で説明する時間を十分に取れないというジレンマがあります。良いものを売りたいけれど、伝えきれない。だからこそ、新しいお客様にどう出会ってもらい、リピートしてもらうかが常々の課題です。
SNSでは10万人を超えるフォロワーを抱えるものの、その熱量を売上にどうつなげるかも、これから伸ばしていきたい領域だと話します。
オーガニックをもっと身近に。惣菜やお弁当をエントリー商材にする 試み
向井:麻布などの店舗を中心にほとんどの店舗で販売しているお弁当や惣菜も、オーガニックへの入り口として力を入れている領域のひとつです。忙しい方にとって、お昼の需要(お弁当)はとても重要で、お弁当や惣菜は毎日の家事の手間を少し減らせるアイテムです。「オーガニックはハードルが高い」と感じる方でも、気軽に取り入れられる。原料にこだわり、有機原料をなるべく使っていく方向で進めています。
オーガニック専門店で買ったからという安心感が、お客様の後押しになっている実感があります。


Neighbors Food Marketへの期待、小さくも心躍る挑戦の数々
商談会は、向井さんにとって多くの生産者との出会いやチャレンジの場になっています。先日のNeighbors Food Marketの商談会に参加されていたトルティーヤクラブの片山さんとは、以前から商品開発について相談を重ねられていました。まだまだ課題は多い中でも「有機トウモロコシを使ったオーガニックトルティーヤの実現ができたら、お客様にもきっと喜んでもらえるはず」と目を輝かせます。
向井:Neighborsに参加するメーカーさんは小さなロットで生産している方々が多いからこそ、新しいチャレンジを一緒に楽しめる。いいものができたら、数が少ないなら少ないなりにエリア限定などの形ででも販売できるようにしていきたいと思っています。
さらに向井さんが温めているのが、輸入原料を日本の作り手の技術に掛け合わせるアイデア。
向井:例えばNeighborsに参加しているクラフトチョコレートメーカーさんのように、素材ひとつひとつにストーリーを込めて仕上げてくれるメーカーさんに、私たちが持ち込んだ原料で商品を作ってもらえたらという構想もあります。ハーブティーの香りをまとったチョコレートとか、まだ存在しない組み合わせを提案できたら面白いと思うんです。
向井さんは輸入商品をそのまま売るだけでなく、日本のものづくりと掛け合わせて新しい価値を生み出すことも、これからのテーマだといいます。
「有機」をうたえることの価値。サプライヤーへ贈る、率直なエール
最後に、Neighbors Food Marketのサプライヤーへのメッセージを尋ねると、向井さんの言葉に一段と熱がこもりました。
向井:日本にはものづくりで世界のトップを取れる力があると思うんです。ただ、伝え方や宣伝の力がまだ弱い。いいものを作っているのに、謙遜して終わってしまう方がとても多い。
「オーガニックを作ることが難しくて大変だ」で終わるのではなく、「オーガニックを作ればこんな世界観が広がるんだよ」と力強く示せるメーカーや企業がもっと出てきてほしいと思っています。
向井さんが実践者として名前を挙げたのが、ドイツの展示会でも精力的に発信を続けるサプライヤーの姿でした。「ただ好きだからやっています、で終わらせず、世界が広がっていく可能性まで見せてくれる。そういう存在に、私たちも背中を押されています」。
有機JASマークについても、こんな視点を語ってくれました。
向井:店舗でお客様と直接話す機会やタイミングが限られる中で、パッケージに『有機』と書いてあるだけで伝わることは、実はとても大きなメリットなんです。認証を取るコストがもったいないと考える生産者さんも多いのですが、そこにこそ価値があると私たちは思っています。
円安の今こそ、日本の生産者が海外に価値を伝えていくチャンスでもあると向井さんは考えています。
向井:海外では日本食ブームが続いているのに、輸出まで踏み込めているメーカーさんはまだまだ少ない。作るだけでなく、アピールする。もっと力強く発信していく企業が増えたら、オーガニックという市場そのものが、そして日本のものづくりそのものが変わっていくと思います。
フランスと日本、輸入と輸出、そして生産者と消費者。その間に立ち続けてきた向井さんだからこそ語れる言葉で、日本の生産者、メーカーへのエールとも言えるお話を聞かせていただくことができました。
Bio c' Bon (ビオセボン) 麻布十番店
〒106-0045 東京都港区麻布十番2-9-2
OPEN: 9:00-22:00
定休日: 年中無休
TEL: 03-6435-4356
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Text/Photo Naomi Yamashita (Neighbors Food Market)