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Neighbors Interview AKOMEYA TOKYO 商品部第一商品課 バイヤー 星野仁志さん

全国各地から厳選したさまざまな種類のお米を中心に、ごはんと相性抜群のごはんのお供や和食の中心にある出汁や調味料、食器・調理道具などを扱うライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」。全国39店舗の拡大を支えてきたバイヤーの星野仁志さんに、東日本大震災での気づきから、昨今の「米騒動」を乗り越えた産地との絆、そして地域とともに歩む未来のビジョンについてお話を伺いました。

震災で気づいた「食」の重要性。スーパーの現場からバイヤーへ

高校時代のアルバイトから地元密着型スーパーに身を置き、売り場のマネージャーを勤めていた星野さん。転機となったのは2011年の東日本大震災でした。

星野:3.11の際には物流が大混乱し、売り場から商品が消えました。当時はお米や日配品を担当していたのですが、小売という仕事の重要性を痛感し、仕入れの現場から食を支えたいとバイヤーへの挑戦を決めました。

星野さんはその後お菓子のバイヤーなどを経て、約4年前にAKOMEYA TOKYOへ参画。当時10店舗ほどだった同社に、食品におけるバイイングのスペシャリストとしての知見をもたらし、39店舗規模への急成長を陰で支えてきました。
星野:入社してから毎年出店を重ね規模が大きくなったからこそ、力技ではなくロジカルに、システム化し持続可能な事業基盤を作っている段階です。

「米騒動」を乗り越えられたのは、産地との信頼関係があったから

近年特に印象深かったのが、いわゆる「米騒動」だったと星野さんは振り返ります。様々な理由で市場にお米が流通しづらくなり、パニックバイイングが発生。事前に確保していた玄米量では次の新米まで在庫が足りなくなる可能性が出てきました。「お米を中心としたブランドなので、品切れだけはなんとか避けたい」という切迫感の中、産地との日頃のやり取りが力を発揮したといいます。

星野:日頃からの産地とのコミュニケーションや信頼関係があったからこそ、比較的早い段階で新米の時期まで必要なお米を追加で供給いただけることになったのです。決して僕一人の力ではなく、AKOMEYA TOKYOとして今まで結んできた信頼関係のおかげです。

この経験を経て、ギフト需要は米騒動前と比較して大きく伸びているといいます。
星野:僕らも利益を出して持続性を担保しないといけない。そして販売を通してしっかり産地に適正な利益を還元してより良い循環を創り出す。それを『”おいしい”の循環型社会』と呼んでいます。その象徴的な事例が、福井県永平寺町の生産者や役場、JAとの関係です。6月に開かれた店頭イベントでは福井県知事自ら店頭に立ち、福井県永平寺町産のいちほまれというお米の試食イベントを企画。長蛇の列ができ、多くの方にそのお米を知ってもらうきっかけとなりました。もうひとつが、地域活性化包括連携協定を結ぶ島根県飯南町の生産者とともに出雲大社へコシヒカリを奉納する取り組み。ご奉納したお米は祝詞をあげてもらった上で店頭でも販売しており、生産者自身が神楽坂の店舗まで足を運び、お客様の前で自ら販売することもありました。作った方がお客様の目の前で『美味しい』と言われる瞬間を見ると、こちらも本当に嬉しくなります。それが生産者さんのモチベーションにもつながっていく。店頭で生産者と知り合って、実際に産地まで訪ねていくお客様もいらっしゃいます。

島根県飯南町産コシヒカリ

生産者の和田幹雄さん

お米市場には終わっていない「構造的な課題」がある

米騒動は表面的には落ち着いたように見えても、実は今も続いていると星野さんは指摘します。抹茶の価格が高騰したことで茶農家が煎茶用の茶葉栽培を減らし抹茶の生産量を増やし、結果的に煎茶までも値上がりし、国内消費量に影響がでる連鎖。同様にお米においても需要と供給のバランスが偏り、結果としてお米の価格が高騰し米離れが起きてしまっている構造があるといいます。
星野:このまま米離れが進み、お米の消費量が低迷すれば稲作の持続性に支障がでかねません。ただ、お米はやっぱり日本の食の中心。そこに対してしっかり課題解決していかなければという思いがあります。と、星野さんはバイヤーとしての危機感をにじませました。

商品選びの軸は「おいしさ」と「ストーリー」。出口(お客様への届け方)までデザインする仕入れ

AKOMEYA TOKYOの店内には、選ぶだけでワクワクするような商品が並びます。そのバイイング基準は一貫しています。

星野:商品選びで大切にしていることは、1つめにはもちろん「おいしいこと」。そして2つめは、「ストーリー」を大切にしています。産地の背景や作り手の思いを深く理解した上で、慎重に取り扱いを検討します。プライベートブランドの商品は必ず試食会を行い、味を確かめながら、ストーリーを丁寧に確認していきます。そしてどういうお客様が、どういう場で誰とどうやって楽しんでほしいのかという出口のデザイン。出口の先を想定しながら商品を仕入れる、商品を設計していく。それを当社ではデザイン思考と呼んでいます。

また、おいしいお米を見極める方法を尋ねると答えは意外にもシンプル。
星野:ひたすら試食です。こういう味わいのお米が欲しい、こういう新米をこの時期に出したい、と探していきます。市場トレンドを把握・分析しつつ、あくまで“おいしさ”と“ストーリー(生産者の想いや生育環境などの背景)”という独自の軸で取り扱いを検討していきます。

徹底した顧客理解から生まれる独自の商品とお買い物が楽しくなる店頭

AKOMEYA TOKYOの象徴的な商品といえば、真空パックで6か月以上日持ちする2合米のシリーズ。お米やお酒のような種類が多く選ぶのが難しい商品でも、AKOMEYA TOKYOの店頭では楽しんで手が伸びる。

※画像はイメージです

星野:お米に関してはもっちり、あっさり、しっかり、やわらかといった味わいの違いをラベルの色分けで分かりやすく表現しています。贈る場面・楽しむ場面を想定した「選ぶ楽しさ」が支持され、ギフトとしてはもちろん、自家需要にも広がっています。また最近では父の日ギフトでも、普段日本酒を呑まれない方にも、カジュアルに日本酒を楽しんでほしいという想いから、甘口・辛口や淡麗・濃醇でマッピングし、相性の良いご飯のお供を提案する独自のペアリング企画を展開しました。計り売りのお米には、生まれた時の体重を結婚式や出産祝いの品として贈るという楽しみ方も生まれています。

売り場の作り方、商品の提案のみならず、店舗スタッフが商品の背景を形伝える存在となり、単にモノを売るだけでなく販売を通して人やもの、そして土地を結びつけ、今までにない調和を生み出し、そこで生まれた新たな価値を語りつないでいく「カタリスト」(触媒としての存在”Catalyst”/ストーリーを語る“語りスト“)という考え方のもとワークショップも重ねているそう。お店で“おいしいもの”の知識が増える体験ができる。AKOMEYA TOKYOでのお買い物の醍醐味はそこにありました。

商談会での出会いから生まれたPB、「生姜百景」のPB商品

Neighbors Food Marketに参加している生産者でもある後藤製菓さんとの取り組みについても伺いました。
星野:大分県臼杵市の後藤製菓様とのPB開発は、商談会での偶然の出会いから始まりました。かつて生姜の産地だった大分県・臼杵で、地元を盛り上げたいという思いから6次産業化に挑戦する後藤製菓様の姿勢に共感し、発酵ジンジャーシロップやジンジャービアなどのPB商品が誕生しました。

Neighborsのような商談会には、お米以外のカテゴリーでも積極的に足を運ぶようにしているという星野さん。生産者同士のつながりや、そこで生まれたご縁から広がっていく取り組みも多いとのことでした。

Neighborsを通じて、地域に根差した生産者の「出口」を増やしたい

今後の新規開拓ももちろん大切にしつつ、既存の取引先との関係を一歩踏み込んで深めていくことに軸足を移しつつあると星野さんはいいます。
星野:現在は、より深いお取り組みができるお取引先様を見極めていく段階に来ていると感じています。現在構想しているアイデアのひとつは、お米の生産者やメーカー同士の横のつながりを、AKOMEYA TOKYOがカタリストとなり繋げていき、より大きな取り組みや食文化の持続性に貢献していくことです。AKOMEYA TOKYO in la kagu(神楽坂)のイベントスペースを、自治体と連携しながら「店舗のメディア化」の拠点にしていきたいという構想も膨らんでいます。
Neighborsに登録されている生産者さんは、地域に根差してサステナブルに続けていきたいという方が多い印象です。売り場のスペースには限りがありますが、イベントなどの形でコラボレーションできることがあれば、ぜひご一緒したいですね。
また、AKOMEYA TOKYOは取引先を全国各地に持ち、自治体との長年のつながりを持つメンバーも多くいます。「食のテーマで何かできないか」という相談が来ることも多いのですが、よりお客様へ伝わるアウトプット方法を常に模索しています。

Neighborsのようなプラットフォームを通じた出会いと、AOKOMEYA TOKYOの店舗という実際の「出口」を生かした連携に大きな可能性を感じてくださっていました。

星野:産地に足を運ぶと様々な課題を感じます。それぞれの産地には多くのストーリーがあり、多くの方が真摯なモノづくりを通して地域課題の解決に取り組んでいるのに、それが消費者になかなか伝わらない。そこに僕らが微力ながらアプローチできればと思っています。バイヤーやマーケティングに携わる人間も、地域の課題感を一緒に背負う意識を持たないといけないと思っています。

“おいしさ”と“ストーリー”、その両方を大切にしながら、産地と顧客をつなぐ循環をつくり続けるAKOMEYA TOKYO。星野さんの言葉からは、お米という日本の食の中心を守り、次につなげていく強い意志が感じられました。


AKOMEYA TOKYO in la kagu

 OPEN:11:00-20:00

 URL:https://www.akomeya.jp/

 Instagram: https://www.instagram.co/akomeya_tokyo/

X: https://x.com/akomeyatokyo

LINE: https://page.line.me/akomeya-tokyo

SHOP LIST: https://www.akomeya.jp/store_info/store/list.aspx

 

 

Text/Photo Naomi Yamashita (Neighbors Food Market)

Neighbors Interview AKOMEYA TOKYO 商品部第一商品課 バイヤー 星野仁志さん